クオリティー・オブ・ライフ
「ヘルスリサーチ」とは、一人ひとりのクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上を目的として、自然科学(医学、薬学、健康科学等)や社会科学(法学、経済学、社会学等)の成果を基に、全ての人が最高の医療を享受できるための仕組みを研究する学問です。 その研究の方法は、医療の受け手の観点から、医療を構成する要素を統合し、これら一連の関連要素を効率的・効果的な社会システムとして方向付けすることです。
ヘルスリサーチの概念
本財団は、その振興事業の対象として掲げた「ヘルスリサーチ」について、「保健医療・福祉分野における科学技術の進展が、必ずしも国民のQOLの向上につながっていない場合があることから、多元的な学問の方法論を用いてこれらの原因を解明し、最適な保健医療・福祉のシステム構築に役立つ基礎情報を明らかにする調査研究」と定義づけています。 「ヘルスリサーチ」の包括概念は、WHOの「欧州ヘルスリサーチ・アドバイザリー委員会」が掲げている目的には以下のようにあらわされています。すなわち、「保健医療・福祉の基礎は、生物医学的研究の成果である知識技術にあることは厳然とした事実であるが、これらの知識技術をすべての人の健康に役立てるには、そのプロセスに影響を与える社会や環境に存在する諸要因を調査研究して適切なシステムをつくる基礎情報を得ることが重要である。これらの調査研究には、異なる学問領域や職能者の協力によって人間が保健医学の恩恵をより良く享受できるようにするために役立つ知識が動員される必要がある」とされています。
ヘルスリサーチ概念の出現と発展
欧米諸国では、第二次大戦後急速に進んだ人間の保健医療関連知識技術が社会全体に適応される過程でさまざまな問題が認識されはじめた1960年代に、
- Health Research
- Health Service Research
- Health Systems Research
- Health Policy Research
- Health Economics
- Health Technology Assessment
などと呼ばれる研究分野が自然発生的に生まれました。
これらの新しい研究分野の出現は、保健医療の技術(診断治療の技術、公衆衛生向上の技術)の「提供者側」からの研究とは別に、保健医療領域の技術を「受け手側」から見る調査研究が重要になってきたことを意味しているといえるでしょう。
こうした考え方から出現したヘルスリサーチの研究領域は、生物医学と疫学研究の知識および臨床医学と医療行政の経験を基礎としたものの、研究の論理と方法論は社会科学に根ざすものでした。